ズズイッと押し出された俺の目の前にいるのは、ガタガタと震えながら俺を必死に見つめる、高宮の姿。




ダメだ……



言いたいことは山のようにあるのに
伝えたい気持ちは、溢れるほどあるのに
そのどれもが意味を成さない。




抱きしめたい。
触れたい。
彼女を思い切り感じたい。




「ゴメン…」




それだけを呟くと、
俺は彼女を思いっきり抱きしめた。





「ズルイ…、ずるいよ、桐谷慎…!!」




高宮は俺の胸をドンと叩きながら、泣いていた。




「会いたかった!
ずっと会いたかったんだからね!?」





泣きじゃくる高宮を抱きしめながら、俺は彼女の髪をスルスルと撫でる。





あの頃と変わらない、黒髪のストレート。



あんなにも触れたいと願った高宮が、今俺の目の前にいる。





好きだ…

好きだよ、高宮。




心の中でそう呟いて。
目の奥からこみ上げる熱いものを必死に隠して、
俺は彼女を力いっぱい抱きしめた。