君を想うとⅢ~True love~



電気一つ。

明かり一つ灯っていない、暗い部屋。





玄関にあるはずの靴も

写真も

カーテンもじゅうたんも

部屋の中には何もない。






「な…に…これ……。」






目の前で起こっている事件が信じられなくて。

ヨロヨロと立ち上がり、部屋の中にゆっくりと入っていく。





リビングの中にはダイニングテーブルも、ソファーも、本棚も何もない。
桐谷慎のお気に入りのワインセラーも冷蔵庫も、何もない。





あるのはただの白い壁と、何もない、ただの部屋。




何もない。



カレを形作る痕跡が、この部屋には何一つ見当たらなかった。