迫りくる、そんな悲しい別れなんて気づきもせずに。
どこまでも能天気でお気楽な私は、エレベーターの扉が開いた瞬間。
「行くわよ!!幸田先生!!」
車椅子係の幸田先生を煽って、9階角部屋の901号室を一直線に目指す。
やっと、会える!!
やっと…カレの胸に飛び込める!!
あと2メートル。
あと1メートル。
そして…
0(ゼロ)センチ。
「桐谷慎っ!!!!!」
期待を込めて開いた扉の目の前に広がっていたのは……
真っ暗闇。
呆れるように笑う彼も。
嬉しそうに眉をゆがめるカレも。
『待ってたよ。』と笑ってくれる彼もどこにもいない。
どこまでも続く真っ黒な闇が…
私の目の前に広がっていた。



