あともう少し。
あともう少しで桐谷慎に会える…!!!!
期待に胸を膨らませながら。
彼に会ったら一番に何を言おうかと悩んでいた頃。
アリストコート9階には、私たちが乗り込んだモノとは違うエレベーター。
2号機が到着してしまっていた――……。
大きなスーツケースをゆっくりと運びながら。
「バイバイ…、高宮。」
そう…呟いて。
桐谷慎はエレベーターの中に姿を消した。
9階に登る私と
1階へと下がる彼。
こんなこと思うのは変なんだけど…
もしもエレベーターが銀色の鉄の箱じゃなく、透明なガラスケースだったなら。
エレベーターがすれ違った瞬間に
『あぁーーっ!!!!!!!!』
って…、気づくコトが出来たのにね。
あと1分。
あと少しの差で……
私たちは永遠にも似た、苦しい別れを経験することになってしまう――……。



