【PM11:58→アリストコート】
「着いた!!
行くよ!!高宮さん!!」
約束の時間の2分前。
私たちはアリストコートの外来用の駐車場に到着した。
幸田先生は大急ぎで運転席を降りると、後部座席から畳んだ車椅子を急いで取り出す。
私は…
「いたっ……イタタタっ……!!」
情けない声を上げながら。
肋骨の痛みを必死にこらえて、ゆっくりと助手席を降りる。
「早く行くぞ、高宮さん!!
早く行かなきゃ12時になっちゃうぞ!?」
「わ、わかってるわよ!!
で…でも…、痛いのよ~~!!!!」
「バカ!!
ドアを叩き壊すって言ったのは自分だろーが!!
痛みぐらい我慢しろ!!」
「む、無理~~~~!!!!」
深夜の駐車場で幸田先生と
ギャーギャー言い合いながら、
運命の扉に手をかけた、私。
あの時の私は……
なんでも出来ると思っていた。
もうこの手の中に、全てを手に入れた気になっていたんだ。
幸せな未来も
桐谷慎の手のひらも、
全部全部この手のひらの中にあると、思っていたの……。



