そう…車の中で私が必死に願っていた頃。
桐谷慎は荷物一つも残されていない、アリストコートの901号室で私をずっと待っていた。
「シンちゃん。
そろそろ行かないと……。」
「わかってる。
もうちょっと待って。
12時まで待つって…約束したんだよ、高宮と。」
窓の外を眺めながら。
桐谷慎は祈るように、私を待ち続けてた。
―☆―☆―☆―☆―☆―☆―☆―
桐谷慎。
あの時、もう少しだけ早く私がアリストコートに着いていたら。
こんな結末にならなくて済んだのかな。
あと5分。
ううん。
あと1分私達に時間があったなら。
こんな結末にはならなかったのに…ね。



