「バカだよな~。
アイツには一度ならず2回もフラれてるくせに、諦めきれないなんてさ。」
「……センパイ……。」
何も言えず
何も考えられずに、
ただ彼の瞳をじっと見つめているとフッとセンパイは寂しげに笑ってこう呟く。
「頭ではわかってんだ。俺は一ノ瀬を選んだ方が幸せになれるって。
お前と過ごす毎日はきっと楽しいし幸せになれるんだろうなって思う。」
センパイは目の前に置かれたビールを軽く口に含む。
ざわつく店内の話し声と高く響くビリヤードの音。
穏やかに流れるオスカー・ピーターソンの軽やかなピアノ。
そんな喧騒の中で、彼はハッキリとこう言った。
「それでも…、
それでも俺は伊織が欲しい。
お前を傷つけても、部長を裏切ってでも、誰を傷つけても後悔しない。アイツじゃなきゃ…、俺はダメなんだ。
伊織じゃないと…ダメなんだ…。」



