「俺は…、伊織じゃなきゃダメだから。」
ヒドイ人
初めてセンパイのコトをそう思った。
真っ直ぐな目をして、何の淀み迷いもない目をしてそんなコト言われたら…、オンナとしてのプライドがズタズタじゃないか。
“伊織じゃなきゃダメ”
そんなこと…言われなくても知ってるよ。
何年アンタの側にいたと思ってるの?
センパイが伊織のことをどれだけ愛しているかなんて、痛いほどわかってる。
あたしの入る隙間なんてどこにもないことも。
だけど…
あらたまって言われたら、あたしバカみたいじゃん。
ダメだって言われてるのに
やめとけって言われてるのに
それでもやっぱりセンパイのコトが好きだと思う自分がミジメになるじゃん。
センパイの視線に耐えきれなくてフッと彼から視線を反らすと、彼はフゥと軽くため息を洩らした。



