モヤモヤした自分の気持ちを飲み込むかのようにジンライムをグッとノドに流しこむ。
胃に入った瞬間、奥でカッと熱くなるアルコール。
そんなあたしの些細な変化に気づいたんだか気づいてないんだか
「こんなこと一ノ瀬に言うべきじゃないのはわかってるけど…。
俺、もう一回だけ伊織にぶつかってみようと思ってる」
目の前にいるドンカン男はあたしの気持ちも知らずにこんなヒドイ言葉を投げつける。
「…そう。」
モヤモヤとグサグサとイライラと心の中に生まれた負の感情を必死に飲み込んで、やっとのコトでその二文字を口にする。
センパイの目なんて見れない。
だって何となく次に言われる言葉がわかるから。
その言葉から逃げるように顔を背けてジンライムをひたすら飲みこむ。
そして、なんの味も香りもしないジンライムのグラスが空になった時。
「一ノ瀬、俺は…やめとけ。」
目の前の無邪気な悪魔は真っ直ぐな目をして、あたしにそう言いきった。



