引きつり笑いを浮かべながら、携帯の電源を切った俺は最高に情けない顔をしていたに違いない。




「悪い、一ノ瀬。」


そう言って無理して笑うと


「バカね。傷ついたならスナオに傷ついたって言えばいいのよ。」


そう言って一ノ瀬が呆れたように笑う。





「伊織にはあたしから文句言ってあげるわ。
センパイ気にしてたわよーって。」


「アホかっ!!そんなことしたら俺がかっこ悪く思われるだろーが!!
オトコは潔さが大事だ!!」






そう言って…
やっとの想いで消した、お前の連絡先と、携帯の電源。




コレで…いいんだと。
コレでお前は幸せになれるんだと俺は思ってた。




ゴメン。
ゴメンな、伊織。




お前と部長を不幸に追いやったのは、間違いなくこの俺だな。





あの日俺がかけた1本の電話。




あの1本の電話が
俺達の運命を大きく変えることになってしまっていただなんて…



どこまでも馬鹿な俺は気づきさえしなかった。