伊織とは違う
少し線の細い指に
薄い手のひら。


アイツとは違う体温
アイツとは違う、触れ方。


きっと…
いつもの俺なら、そのかすかな違いに嫌悪感を抱いたと思う。


だけど、不思議とイヤじゃなかった。




一ノ瀬の指が俺の髪に触れるたび…
なんだかホッとした。




伊織に触れられると体中が熱を持って
自分でも制御不能なくらいに
心の中がザワつくんだけど…



一ノ瀬に触れられるとホッとする。



肩肘はらなくてもいいんだよ…
って言われてるみたいで
どんな俺でもコイツなら受け入れてくれそうな気がして…
なんだかホッとする。






「いつか……あたしのこと好きになってね、センパイ。」





俺の頭をヨシヨシ撫でながら耳元で囁く、一ノ瀬の願い。






「ばーか。こんな肉食女子は死んでもお断りだ!!」


フンっと悪態をつきながら軽口を叩くと


「スナオじゃないね。」


と一ノ瀬が微笑む。






そして俺の顔を見つめると


「おばぁちゃんになる前には…
好きっていってね。」


そう言って
一ノ瀬は俺のオデコをピンっと軽くはじいた。