君を想うとⅢ~True love~



耳の奥に流れこむ、人いきれ。
目の前で足早に過ぎていく、風景。




『しゅーちゃん。』

『伊織~!』




落ちる夕日を追いかけながら、無邪気に自転車をこいでいたあの頃とは違う、都会独特の喧騒と独特な時間の流れ。





そんな流れの中で…
私達はまるで世界に2人しかいないような錯覚に陥る。





目の前で瞬き一つせず、私を凝視する彼を見つめながら、私はもっとひどい言葉で彼を傷つける。





「しゅーちゃんは、そんな私に気づかなかったね。
だけど、桐谷慎は気づいたよ。
そんな……、ズルイ私に。」




彼がその言葉を聞いた瞬間。
苦しそうに眉を歪ませたことに気づいていたのに。




「桐谷慎は私の幻想じゃなく、生身の私を愛してくれた。
私のズルい所も、バカな所も、全部ひっくるめて好きだといってくれた。
だから…彼を選ぶの。」



私は必死で気づかないフリをして。
強い女を演じてみせた。