『い~い?伊織。別れるなら情は禁物。
あんなヒドイ女、思い出したくもない!!ってくらい酷いフリ方してあげんのが優しさってもんよ?』
私は親友の言葉を頭の中で、何度も、何度も、繰り返す。
しゅーちゃんに最後にあげる優しさが冷たさであるのなら…
私は今、逃げるワケにはいかない。
私は決意を込めてフゥと息を吐くと。
カバンの中から小さな宝石箱を取り出し、しゅーちゃんの胸に向かってソレをグッと押し付けた。
「返すね、しゅーちゃん。」
その中身は…
しゅーちゃんが私にプロポーズした時にくれた、エンゲージリング。
実は…
今日きちんと返そうと思って、出かける前にバッグの中に詰め込んでおいたんだ。
「私は…コレを受けとるワケにはいかないよ。」
しゅーちゃんが、ありったけの想いを込めて贈ってくれた、大切なエンゲージリング。
そんな指輪を彼の胸に押しつけたまま、私は更に残酷な言葉を紡(つむ)ぐ。



