あの資料室で桐谷慎は私のことを“つまらないオンナ”だと言った。
『高宮。
お前に足りないのは愛でも状況を読む力なんかでもない。
お前に足りないのは…“覚悟”だよ。』
愛した私とは違う気がする、と冷たく言い放ったアイツ。
そして今の私には興味がない、と冷たく言い放った、私の上司。
それを思い出して…
私はパジャマの袖でグッと両目の涙を拭いた。
苦しいし
逃げ出したい
でも…
今、踏ん張らなきゃあの人は絶対に私を認めてくれない。
『ただ待っているだけなのか?
答えが出るのを待ってるだけなら、お前はこの先、何度も同じコトを繰り返す。』
桐谷慎は…
揺らがない愛を私に求めてる。
断固たる、決意のある、愛ってヤツを。
………。
しゅーちゃんに向き合うのは正直怖い。
でも桐谷慎を手に入れたいなら、私はこの橋を渡らなくちゃいけない。
誰を傷つけても守りたい恋がここにある。
それなら私は、どんな悪女にだってなってみせるって…
私はあの日、決めたじゃない。
そう、私は胸の中で何度も何度も反芻した。



