窓の奥から聞こえる、鳥のさえずり。
車のエンジン音に、かすかな話し声。
そして静かに迫る、最後の時。
ポタ…
ポタリ…
抱きしめた布団カバーににじむ、涙のあと。
――苦しい…。
私だけが苦しいんじゃないってわかってる。
しゅーちゃんだって、桐谷慎だって、きっと苦しいに決まってる。
でも……
苦しくて、苦しくて、逃げ出したい。
このまま逃げて、
桐谷慎の部屋に隠れてしまいたい。
しゅーちゃんと決着なんてつけたくない。
しゅーちゃんを傷つけたくなんてない。
カレが苦しんで、傷ついた表情を見せたら…
きっと私は、自分自身が消えてなくなってしまいたい衝動に駆られてしまう気がする。
このままこの部屋の中でうずくまって、
時間が過ぎるのをずーっと待ってたらダメかな。
できれば代官山駅には行きたくない。
行ったら最後、傷つくことはわかっている場所になんて行きたくない。
そんな…
弱い自分に負けそうになっていたとき。
『随分、つまんないオンナになっちゃったね。』
あの、地下の資料室で、桐谷慎がつぶやいた一言を私は思い出した。



