付き合っているとき。
あまり口に出して言ってくれなかった、愛の言葉。
恥ずかしそうに『好き』といってくれるあの人の表情に…
どれだけ私の心がトクトクと早鐘を打って、キュンキュンと苦しくなったか、わからない。
なかなか口に出さない彼の一言に、
あのころの私は一喜一憂してた。
彼の自転車の後ろに乗った帰り道。
初めてのキス。
初めて感じた肌のぬくもり。
不器用に
でも一生懸命に
私の全部で彼が好きだった、あのころの私。
そして…
今もそんな彼が大好きな、私。
大切で、誰より優しいあの人を…
私は今から傷つけに行く。
『伊織…好き。
…すげぇ好き。
悔しいけど、世界で一番好きみたい…。』
そんな風に私に傷ついた目をしてすがった、あの人を
私は今から傷つける。
誰よりもひどく傷つける。



