騒がしい店内の喧騒に、遠慮がちに流れるBGM。
そんな煩い周囲とは違って
俺と伊織、2人だけの時間は静寂で時が止まった空間のようだった。
黒目がちな、勝ち気な瞳
スッと通った鼻筋に
サラサラ黒髪のストレート。
フェロモンむき出しの体に隠された、子どもで乙女チックなコイツの本性。
「伊織…好き。
…すげぇ好き。
悔しいけど、世界で一番好きみたい…。」
そう言って。
抱きしめた伊織の体からは優しい、あの時と同じ甘い甘い匂いがした。
アイツの髪に絡みつくシャンプーの香りに理性が剥ぎ取られ…
あ~、ヤバい。
理性、飛びそう……!!
「ゴメン、伊織…!!!」
アイツのシャツの中に手を入れて、キスをしようとしたその瞬間。
「藤堂くん~??」
「どこっすかー!!藤堂係長~っ!!!」
た、田中さんに喜多川~っ!!!???
バットタイミングに現れた2人の声に俺はハッと正気に戻り…
ガックリと肩を落とした。