――はぁ~、途方もねぇなぁ~。






その言葉を聞いて感じたのは強烈な敗北感。








桐谷慎って男は途方もなくデカくて、途方もなく強大で、途方もなくバカで自分に正直な男。





は~あ。
今なら勝てると思った俺がバカだったのかなぁ。








どうやら俺はとんでもない男に勝負を挑んでいたらしい。







「…ハハッ。」







今さらながら自分のバカさ加減にイヤになる。









とんでもない人に試合を挑んじまったんだなー、俺。









心の中に浮かんだのは…
後悔と小さな満足感。









こんなにすげぇデカイ男と無我夢中で張り合えるなんて、一生のなかで何回あるのかわかんねぇ。







心には大分難アリだけど、あれだけの男と伊織を巡って張り合えたコトは俺にとってきっと幸せなコトだったんだろう。







勝負の行方はまだまだわからない。








だって人生は何が起こるか予測もつかないモノだから。