「は?何、コレ。」


「スピードレーサーの広告案件です。
早坂オーナーから連絡があり、島こずえがデザインについて注文をつけたと教えて頂きました。」




早口でまくし立てると、桐谷慎は






「ふーん、なるほどね。
日本で一番速く泳ぐ女の子も一皮むけば、ただの女の子…ってワケか。」








悪魔で冷静にフフンと笑う。









「…で?お前の主張はこの企画…ってワケか?」



「ハイ。私自身、学生時代に水泳部に所属していましたが島選手と同じ思いをしていたコトに気づいたんです。
紺色の水着じゃなくて…速くてカワイイ水着を着てみたいといつも思っていました。」



「…なるほど。」








桐谷慎はお仕事モードの厳しい顔をしたまま、私の突きつけた企画書をパラパラとめくって……







「アイデアはいいけど中途半端だな。」








そう言って資料を私に突き返す。







――え…っ!!??







思わず絶句した瞬間









「でも…方向性は悪くないな。」


「…へっ……?」







意味がわからずポカーンとした顔をしたまま彼を見つめ続けると






「思いつきじゃなく、もっと詰めて企画書を仕上げてくるんだ、高宮。ロゴを再構築したいならデザイナーも必要になってくるし、競泳水着には規定も多い。
それらを3日で調べあげて企画書を挙げられたら…この案件、考えてやってもいい。」