それを聞いて。
思わず私はハッとする。
『あの水着が機能的で競技用に作られているモノだってことは十分承知の上だけど、デザインにもこだわって欲しい…ってね。』
私が高校生の頃、思っていたコト。
“なんで競泳用の水着は可愛くないんだろう”
競泳で使われる水着は美しさよりも機能性が重視される為、どうしてもデザインという面ではパッとしないモノが多い。
だからといって普通のビキニでクロールを泳ぐワケにもいかず、泣く泣く紺のワンピースの競泳水着を着てたワケだけど……。
競泳水着なのにスタイリッシュ。
そんな水着があればいいのにといつもいつも思ってた。
現役を離れてしまってから、そんな感覚に鈍感になってしまっていたけれど…。
島さんの求めるその水着は、私の夢でもあったハズだ。
「早坂さん。」
『ん?なに~?』
「少し時間をくれませんか?」
『どういうこと?』
「…開発部の方に掛け合ってみます。
島こずえモデルの水着のプロトタイプを作って貰えるように。」
息巻いてそう受話器に向かって話しかけると
『ありがとう。
そうしてくれると島も喜ぶよ。』
そう言って。
満足そうに早坂さんは笑った。