私の背中に無数についた紅いキスマークをいとおしそうに撫でながら、満足そうに微笑む桐谷慎。
最初は…
意味がわからなかった。
だって“元カレ・しゅーちゃん”は見える所にキスマークをつけたがる人だったから。
『よしっ。コレで伊織は俺のモン♪』
キスマークは他の男の子を寄せ付けなくする、いわばマーキングのようなシロモノ。
だから…誰も気づかない、誰にも見られない場所にキスマークなんてつけて、意味なんてあるのかなって思ってた。
だけど会社の廊下で桐谷慎とスレ違った時。
ブラウス越しに背中のキスマークをツンっと触られて……、私の心臓が痛いくらいにドクンと跳ねた。
私と桐谷慎しか知らない、隠された愛のシルシ。
それをピンポイントで触られた瞬間
『昨日の、はしたなくてかわいい高宮を知ってるのは俺だけだよ?』
そう言われてるみたいで、お腹の奥がキュウンと疼く。
そして…
『コレッて最高の束縛だと思うよ?』
と言った桐谷慎の言葉の意味を思い知るんだ。



