桐谷慎の厚い胸板にコテンと頭をもたれかけると


「後悔は…絶対しないから安心して??」


と私はキッパリと言い切った。




「は??
高宮……どういうこと…?」



不可解そうに訊ねる桐谷慎。




そんな彼に向かって





「桐谷慎が言ったんだよ?“淋しいだけなら相手してあげる”って。
じゃあ…今、相手してよ。」


そう言って。
彼の腰に腕を回して、彼をギュッと抱きしめる。







「SEX…しよ?桐谷慎……。」


「高宮……。」






きっと……
こんなの間違ってる。


こんな手段で彼をつなぎ止められるハズがない。


百戦錬磨の彼が、こんな幼稚な手段に引っ掛かってくれるハズがない。



だけど……
あの時の私は常識よりも理性よりも何よりも、彼が欲しくて欲しくて仕方がなかった。



“彼を誰よりも近くに感じたい”


“彼と誰よりも近く、深く、繋がりたい”







あの時の私の頭の中にあったのは、たったそれだけだった。