久しぶりに感じた桐谷慎のキスは…
少し淋しくて、少し切ない、涙の味がするキスだった。
ついばむように
試すように
触れるだけの、桐谷慎らしくないキス。
いつものあの強引で官能的で、火のついたようなキスじゃない。
でも……、それでも私は幸せだった。
バカな私は彼がくれる快感なら、なんだっていいと思えたの。
そこに、何の愛がなかったとしても。
そしてキスの余韻が残るなかでゆっくりカラダを離すと、
「高宮、俺は…別に好きじゃなくてもある程度のラインを越してくれてればHはできるし、キスもできる。
そんなイイカゲンな男なんだよ??」
真剣な顔をして。
桐谷慎は私にそっと問いかける。
「……知ってる。
尻軽オンナは嫌いだけど、すぐにヤれるオンナは好きなんでしょ??」
「……へーぇ、…よく覚えてるね…。」
「当たり前でしょ?
アレは人生の中でも3大ビックリ発言の一つだったんだもん。」
そう言うと、彼は呆れたように“そうなの??”と笑う。
そうだよ。
桐谷慎のセイで私の恋愛感はおかしくなったんだ。
それまでの私は、世間の人の決めた枠の中で、常識の範囲内でする恋愛が正しい恋愛なんだと思ってた。
人から後ろ指さされるような、倫理観から外れた恋愛には興味がなくて。
そんなモノに振り回される人達は…
不幸になってる自分に酔いしれて。
本当の幸せを見つけようとしない、バカな人達の集団なんだと思ってた。
本当に…そう思ってたんだよ??



