「そんなに俺が欲しいのならお前がこっちに来ればいい。逃げ道なんて与えてやらない。」




「……桐谷慎……。」




「俺は追いかける気はなければ、引き止めるつもりもない。
どうしたいのかはお前が決めろ。」







桐谷慎のクールで冷たい声が部屋中に響く。



桐谷慎が言ってることはもっともで。
正論で歪みがない言葉だということはよくわかる。




だけど……
今さらなんだけど。
ワガママでどうしようもないオンナだってコトはよくわかっているんだけど。




桐谷慎が私に執着を見せなくなったことが死ぬほど悲しい。
“追いかけて”欲しかった。
ずっと“待っていて”欲しかった。






こんな感情、ワガママなのも、自分勝手なのも、痛いほど承知している。



だけど…
どこまでもズル賢い私は、彼を失いたくないと切に願った。






しゅーちゃんか

桐谷慎か。







答なんて出てないクセに。
私は見えない鎖で彼を完全に繋ぎ止めたかったの。