――え……??



彼の意外な発言に驚いて思わず思考も体もピタリと止まる。

そんな私を嘲笑うかのように。
桐谷慎は冷静な声を保ったままこう言った。






「俺は…高宮の出した答えに従おうと思ってるから。」


「……??」


「俺はお前がきちんと考えた上で、覚悟を持って決めた事項なら、喜んでそれを飲んでやるよ。
それが…どんな形であれ…な。」




そう言って。
桐谷慎はタバコを口に含んで…苦しそうにフゥと煙を吐き出す。



「高宮、逃げずにきちんと考えるんだ。
誰かを選ぶってことは…、誰かを選ばない選択をするってことだ。」


「…うん…。」


「誰も傷つけずに…なんて都合のいいことは考えるなよ?この関係にそんな幸せな解決はありえない。」


「…うん…。」





窓一つない、この地下の資料室。
月明かりすら入らず、外の明かりすら入らない、この部屋の唯一の明かりは桐谷慎の吸うタバコの灯り、ただ一つ。



誰もいない、私と桐谷慎だけのいる小さな世界。





そんな小さな狭い世界で。
桐谷慎は最後にポツリとこう言った。






「イイコでいようだとか、周りにどう思われるかなんてくだんないコトは考えるな。
倫理や体裁に縛られた幸せなんて…お前には似合わない。」