携帯の明かりのおかげで、桐谷慎のいる位置と距離感だけはなんとかわかる。
だけど足元と手元はまったく見えない。
さっきまでは桐谷慎が手を引いてくれていたから、スルスルと歩くことができたけど…。
ここから先は完全に手探り状態。
そんなに簡単に歩けそうにない。
「………。」
なかなか立ち上がらず。
なかなか動こうとしない私を見つめて、桐谷慎はハァーと盛大にため息を吐く。
そして…
冷たい目をしてこう言い放った。
「…つまんないオンナ……。」
その言葉の冷たさに驚いて、すがるような目で彼を見つめると
「ちょっと関わらない間に…ずいぶんつまんないオンナになったね、高宮。」
そう言って。
桐谷慎はパタンと携帯を閉めた。



