薄暗がりの中で繋がれた桐谷慎の手と優しい横顔。


どうしてコレが当たり前だと思ったんだろう。
この時間が当たり前だと思ったんだろう。



今さら気づくなんて…、遅すぎる。





桐谷慎の手を握ったまんま、ガクンと項垂れながらトボトボと歩いていると


「何?今さら後悔しちゃったの??」



呆れたように、からかうように、桐谷慎が私の頭をポンポンと叩く。







その顔にキュンときて。
泣けてきて、彼にすがろうと彼に手を伸ばすと




「ダーーメ。
状況に流されて、淋しいだけで俺を求めてる高宮になんて、俺はなんの興味もないよ??」





ニッコリと笑いながら。
桐谷慎はやんわりと私のカラダを押し返す。





「……え……??」





今まで…
彼からのスキンシップを断るコトはあっても、断られるコトはなかった。


彼から受けた初めての拒否反応に戸惑っていると、桐谷慎は私の目をジッと見つめてこう言った。





「中途半端な気持ちで俺を求めるな。悪いけどそんな気持ちに答える気はさらさらないから。」