久しぶりに触れた桐谷慎の手は、ひんやりと冷たくてスラリとしたキレイな手。


その指先に触れられるだけで…胸の奥がトクンと疼く。





ちょっと前まではこの手があるのが当たり前で、この手に引っ張られるままに恋をするのが当然で…。
私はこの手に全てを委ねて、彼に溺れていれば…それでよかった。



彼のくれる愛をただ漫然と受けとるだけで…、それでよかった。


彼のくれる愛の言葉に酔いしれて、甘えるだけでそれでよかった。






「足元気をつけろよ、高宮」

「……うん……。」






薄暗がりの中で
あの頃と変わらない、桐谷慎の笑顔を見て。
私は初めて……自分の犯した罪に気づいた。






なんて…
なんて私はワガママな女だったんだろう。
なんて傲慢な女だったんだろう。






この手があるのも
しゅーちゃんの手があるのも
全部、全部当たり前だと思ってた。




そんなこと…ないのに。
そんなことは決してあり得ないコトなのに。