「葛城。」

「わっ!?……なんだ、霧島か。」

広い教室で1人でただ前を見てボーッとしていた僕には少し刺激の強い声に肩を跳ねらせた。

顔を見てようやく表情がほころんだ。

「いつもなら本読んでるのに今日は読まないんだな。」

「まあ。……な、聞いてくれない?」

僕は唯一心を開ける霧島に今日の事を話した。

今家に見知らない少女が1人留守番していることを。

「それ、大丈夫なのか?犯罪者とかじゃ…。」

「盗まれるようなものないし、殺すならあの路地で殺すだろうし。」

なぜか僕はあの少女を信じれることができた。

「不思議なやつだな。葛城のこの姿でかっこいいって言うなんて。」

「そこ?別にそれは気にするところじゃないよ。」

僕は霧島と話しているときが一番リラックスできた。

霧島とは高校の頃に知り合い、フレンドリーな性格とユーモアセンス、そして心理学者のように簡単に心を読まれることで接しやすくなり、大学も同じ場所に行くと聞いてさらに心を開いた相手だ。

だから彼にならなんでも相談できた。

僕の唯一の親友だ。

「でもその少女すごいな。な、今日家に行っていいか?」

「うん。紹介するよ。」

僕は喜んで彼を招待した。

あの子はどんな反応をするんだろうと楽しみだった。