ご飯の時間は楽しいけど
少し憂鬱になる。



「今日のカレー、おいしい?」

「おいしいよー。
 どんどん上手になってるよね」


隼人のカレーは、お皿に盛った後に辛いスパイスを混ぜてるから
私のとは全然味が違う。
味見なんて、怖くてできないから聞くしかない。


「楓さんのカレーとおんなじ味がする」


にっこり笑う隼人を見て、涙がこぼれそうになった。



何をしても、隼人にはママの思い出しか見えてないんだ。



隼人は、私以外にはほとんど笑わない。

それは、私にとって優越感にひたれる嬉しいこと。

でも、それはママが引き出した笑顔。


『昔はねー、俺も結構悪ガキだったんだ。
 楓さんと出会って、まともな世界に戻れたの。
 笑ったり泣いたりできるのも
 全部楓さんのお陰なんだよ』


全てはママに
ママとの思い出に向けられてる笑顔。

私に向けて笑うのも
ママとの子供だから。

そう思うと辛くて。

気をぬくと涙がこぼれそうで。



私のことを愛してくれてるのは
凄くわかる


でも、それは娘への愛情



どうしたら
この壁を壊せるのかな