オレを気遣った筈が逆効果やったと気付いたからか、頭をうなだれさせる和紗。

 まるで母親に叱られた子供みたいや。なんとなく、意地悪な質問をしてみたなった。

「なぁ。ホンマに悪い思うんやったら、一日だけでエエからゆきなちゃんオレに譲ってくれへんか?」

「いや、それ絶対無理やから!」

 気持ちいいくらいの即答。まあ、答えは聞かんでもわかっとったけどな。

「昔は女なんかすぐ泣くから面倒臭いゆうとったくせに。ホンッマに彼女の事、好きなんやな」

「うん。めっちゃ好き。雪和は俺の天使やもん」

「え?」

 天使? いま“天使”って言うたか? 聞き慣れん言葉を耳にして、思わず原チャを押して歩いてた足が止まる。

「天使……って。オマエの口からそんな言葉、ってか、そんな表現よう出て来たな」

「えー。だって実際そう見えてんもん。雪和が二階から落ちて来た時に」