「わわ、アカンて藍、動いたら」
自転車が大きくふらつき、キキーッと軋んだブレーキ音と共に、前を歩くカップルを追い越してかろうじて止まった。
「マーリア!」
大声で呼んでみる。
「ヒャ、あんたら何? つけて来たん?」
カップルの女の方が鮮やかに笑った。
スラッと長身で、毛先だけ緩くウエーブをかけたショートボブが、美しく整った笑顔を引き立てている。
「まさか。どんだけ暇人やねん、ウチら」
ユキが笑う。
「その子? マリアの自慢の彼氏って」
藍が食いついた。
「うん! ウチの彼の悟でーす」
「ども」
無邪気な笑顔で紹介されてボソッと答えた男の子の頬は、ほんのり赤く染まっていた。
(ふーん、エライ地味やな、普通やん)
(マリアと背ェ変わらんのとちゃう?)
自転車を降り、それを脇に止めながらユキと藍が囁き合う。



