「忘れられへんねやろ? そんな顔しとる」 とそいつは言った。 「や、大丈夫やで、うん」 悟がそう返すと、もう一度足を蹴られた。 「お前わかりやすいんじゃ、ボケ。毎度毎度こっちまで切ないわ」 「あはは、ゴメンゴメン」 二人して苦笑する。 (あかんな、俺…) 悟はマリアではなく藍を見ていた。 見ないように気を付けているのに、遠くにいると油断してついつい見詰めてしまう。 (苦しいって言われたのに、あかんやん) 橋の上で悟が『俺が怖い?』と訊いたとき、藍は小さな声で『苦しい』と答えた。