「えっ、いや、ほんまに偶然やねんで。橋を歩いとったら偶然あの子が走って来て」
「…あんた橋を歩いてたん?」
「え、うん」
「どこ行くつもりで?」
「別に、ぶらぶらと買い物?」
「ふうん…」
最近の悟の言動が気になって、早くから張り込んでいたマリアは、彼が長い間橋の上で誰かを待っていたことを知っている。
それが誰なのか、マリアはどうしても知りたかった。
あんなに必死な目をして、悟が人込みの中を探していたのは、藍なのか、それとも別の誰かだったのか…
まともに訊いたところで、悟は答えをはぐらかしてしまうように思えた。