「お前ら! 教室行ったら覚えとけよ~」
「え!?」
「へ?」
何のことだろうと振り返ってみると、そこにはクラスメートがいた。
……え?
ああ、忘れてた!
すっかり忘れていたけど、今日は登校日で、きっと今はもう登校時間で。
今はもう、だんだんと人通りが多くなり始めていた。
急に恥ずかしくなって、顔が熱くなる。
よく考えてみたら、というか考えなくとも、場所をわきまえるべきだったのに。
「ヤダよ! 何でだよ」
「そうだよ~。あ、あたしみんなにもチョコあるからそれで許してよ!」
「え、マジ!? じゃあ仕方ねーな」
「ダメダメっ! なつのチョコ、俺のだもん」
「はぁ!?」
そんな会話に口元を上げながら、乾きかけの涙を拭って、彼の隣に並んで歩き出す。
あたしって、幸せ者だ。



