どうして自分は結衣になれないのだろうか。
勢いよくぬいぐるみを彼の顔面に近付けたら、やっとこっちを向いてくれた。
無理矢理でしか恋の視線を奪えない立場なんて、歯痒いばかりでやり切れない。
、ばかみたい
彼は知らないのだろうか、私だって気落ちしていることを。
、私だって切ないのに
もう高校二年生なのだから、それなりに空気を読むことはできるので切ないんだとばかりに悲観しない。
泣いたら駄目。今涙を流せばハテナ女だ。
猫の耳を摘むと、小さな子のサンダルみたいにプピプピ鳴った。
「ねー、結衣さ、バイト先で子供にサインしてって言われたんだって。可愛いからって」



