「てか猫、可愛くない?」
「いや、不細工」
「えー、可愛いよ」
「、はは。視力悪い?」
ありきたりな会話の流れは たとえつまらなくても、私には大切なお喋り。
教室で笑う自分たちは、知らない人からすれば近藤君たちに見劣りしないカップルみたいなはずで、
擬似なものの彼氏と彼女を味わえるから幸せだ。
この一時が大事なのに、大塚は狡い。
無意識に結衣を追う瞳。
私から目を逸らせば、こちらを見ていた時とは違い、あちらを眺める丸は愛おしい色に変わる。
それはあんまりだ。意地悪だ。いつだって大塚は泣かせようとばかりしてくる。
――私だって、そんな風に見てほしい。
知ってる?
後ろ姿を追われる方が幸せなのだ。



