好かれる子は狡い、何もしなくても無限に惚れられるから。
私の香水も、私のイメチェンも、私のキメ顔も、彼には何も影響しない。何も伝わらない。
頑張っても反応がないから、頑張った分だけ切なくなる。
大塚は知らない、目の前に居る人間がこんなに涙を我慢し苦しんでいることを。
――長い髪の毛がベージュ色のセーターの上で踊る。
彼の瞳を奪う可愛らしいダンス。
私だって、長いのに
私だって可愛いでしょ?
あの子と自分、タイミングが悪かった?
どうして好きになってくれないのだろうか。
どうしてあの子がよくて自分は駄目なのだろうか。
どうして切ないのは私だけなのだろうか。



