「似合うくない? ふわっと綺麗」
約一年前、大塚を振った経歴がある結衣は、私の毛束を弄りながら微笑んだ。
流行りに乗っかって中学の時にボブヘアにしてから全く梳いてなかった髪は胸下まで伸びていて、
カーラーで平巻きにしているから、螺旋の巻き髪とは違いふんわり波打っている。
綿菓子みたいなヘアスタイルで美味しそうだと結衣が笑うから、連鎖して大塚も笑顔になる。
そして、彼は私の方を見たまま言うのだ。
「でも、田上さん、髪つやつや」――と、甘い瞳に想いをこめて。
…………。
どうしよう、今泣いて良いと言われたら快く号泣したい。
だって、大塚が解き放つ空気は愛に満ちているから――彼は私を切なくさせるばかりだ。



