切ない純愛崩れ


私は大塚が喜ぶお喋りを始めていた。

彼を楽しませたいなら、大好きな親友のお話をすれば良い。

そうしたら私に笑ってくれるから幸せじゃないか。

たとえ擬似でも幸せじゃないか。

あの子について語れば、黒髪の少年が色白の少女を想い蕩ける瞳をしていたのと同等の甘い笑顔を独り占めできるのだから贅沢な幸せじゃないか。


「結衣ん家とか良くない? 近いし」


ほら、簡単。
好きな人は好きな子の名前を耳にすれば、限度なく満面の笑みになる。

賑やかな教室、歪んだ掲示板、ぼやけたチャイムを操る放送スピーカー、体操服がはみ出たロッカー……私たちの大切な世界。


残酷だ、意地悪だ、あんまりだ。

彼にとって私という存在意義は結衣の仲良しさんというポジションのみで、私という小崎里緒菜は居ない。

何にもない、大塚はいつだって結衣ばっかり。