にやけていることを自覚していない近藤君に、イニシャルを掘るのかと聞いたら違うと言われた。
「イニシャルじゃなくって文字にすんの。オーエヌシーアイ……あ、やっぱ文字は秘密」
「え、オンチ?」
「違うよ、秘密。内緒、国家機密。はは。良い単語なんだ、ロマンチスト近藤です、あはは」
赤い顔をして微笑む近藤君は夢見る少年のようで、つられて私も笑ってしまう。
近付いてきた女の店員さん相手に、何やら話し込む――ここは出番じゃない。
むせ返るような甘い空気を解き放つ人。
彼女である結衣の心境を思えば、自然と店の外で待つことにした。



