【完】天体観測 ~キミと見た星~



すると、木下涼介が気を使って、病室から出て行った。
そんな木下の背中を見て

「あ…」

とめようとする鈴原。
だけど、止めずに、俺に向かって話しかける。
鈴原は木下が好きなのかな?
だったら…、止めたって良いんだけど…。
完全に俺は不機嫌だった。
だけど…

「もうすぐ秋も終わうー…」

「え?」

それを聞いて俺は思い出した。
あ、そういえば…。
≪ろれつが回らなくなる≫
あの時読んだ本にそう書いてた。
鈴原は元気そうだから、つい忘れてしまう。
だけど、しっかりと進んで行ってしまってる……。

「あーそうだな。終わっちゃうな~」

俺は、鈴原が喋らないで良いように、ずっと喋り続けた。
俺は馬鹿だよな。
ちょっとあの男に嫉妬して、鈴原に気を遣わせて。

「じゃあ、今日は帰る。また来るわ」

「うん、ありがとう。またね」

鈴原は笑顔で俺を見送ってくれた。
その笑顔に心が緩んだのも束の間、
ドアを開けて、廊下に出ると、そこには木下涼介が立っていた。

「……」

一気に俺の顔は不機嫌に戻る。