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寝がえりを打って、誰かの気配を感じた。

「んー…」

どれくらい寝ただろう?
十分寝たのか、私はスッと目を開ける。
すると、私の瞳に映ったのは……

「ひぃっ!!?」

「どーもっ」

にぃっと元気よく笑う男の子だった。
予想外の事に、私はあたふたすることしか出来ない。

「えっ!へっ!だ、えっ誰っ!?」

「あははははっ」

私の驚きぶりを見て、男の子は面白そうにケラケラ笑う。
笑われている事に気付いて、咄嗟に黙る。
少し、恥ずかしくなった。

「初めましてー」

男の子は、一通り笑い終わると、自己紹介を始めた。

「俺、新しくここに入った木下涼介。よろしくね」

「え…」

この人が、新しい入院患者!?
元気そうだな…
私も後ずさりしながら自己紹介を始めた。

「あ、えーっと…鈴原星夏…です」

「何歳?」

「18歳の高三…」

「おー!俺と一緒!」

涼介くんは元気で、よく笑う人。
悪く言うと、馴れ馴れしい…。

「なぁ、星夏ちゃんって歩けないの?」

「……」

「車椅子あるからさ」

初めて会ったばかりなのに、木下くんはそんな事を聞いてきた。
返事をする代わりに、私は小さく頷いた。
少し、木下くんが苦手だなーって思った。
だって、普通、そういうの聞く時って遠慮するものでしょ?

「なんていう病気?」

ずかずかと来る質問に私は少し、イラッとした。

「脊髄小脳変性症…」

「え!?難しい病名だね~」

「そっちは?」

「俺は、心臓病」

「え…あ、そうなんだ…」

なんていうか…
その場の空気が少し、変わった。