「椎名くん、これ」

おばさんは、一枚の封筒を俺に差し出してきた。

「美冬ちゃん。これ」

そして、もう一枚持っていた封筒を、優木に渡す。

「…なんですか?これ…」

「星夏からの手紙よ」

「…星夏からの…手紙?」

驚く俺と優木。

「それぞれ、一人になった時にでも読んであげてね」

「「…はい」」

「あ、あと。」

「…なんですか?」

「星夏に“さよなら”はしないであげてね」

おばさんは、それだけ言うと、俺たちの前から去っていった。

「………」

「……椎名」

優木が、小さな声で、俺に声をかけてきた。

「なんだよ」

「私たち…幸せ者だね」

「あぁ…」

「この手紙……一生の宝にしなきゃ…っ」

優木の声は、震えてる。

泣きたいんだろう。

だけど、泣かないと決めたんだろう。

「私…星夏の事…絶対に忘れない…っ!」

「…当たり前だろ…。」

そして、その次の日。

さっそく、鈴原の葬式が始まった。

だけど、俺は鈴原に“さよなら”はしない。

その代り、“大好きだよ”と“ありがとう”と“またな”を、伝えた。