「この指輪…どうしたの?」

「バイトして貯めた。でも、結婚式はちゃんとした指輪渡すから」

ニッと笑った椎名くん。
バイト…?

毎日のように私の病室に通ってくれてたのに、

その上、バイトまでしてたの?

絶対キツかったはず。
絶対苦しかったはず。
なのに…なのに。

「どうして…っ椎名くんはこんなに優しいの~っ」

とうとう私は大泣きしてしまった。

流れる涙は止まる事を知らない。

こんなの、最高のサプライズだよ。

ただ、海を見に来ただけだと思ってたのに…。

「笑ってよ。」

椎名くんは私の涙を拭ってそう言う。
その言葉に、私は変な笑顔を返した。

「ハハッ、なにその笑顔」

「感動しすぎてこんな顔しか…っ出来ないのっ」

「アハハッ」

椎名くんが笑う。
それにつられて私も笑う。

これから、私にはどんな未来が待ってるんだろう。

もしかしたら、後何十年も生きられるかもしれない。

もしかしたら、椎名くんと結婚して、幸せな家庭を持てるかもしれない。

もしかしたら、病気も吹っ飛んじゃうかもしれない。

その時は、本当に、それくらい嬉しくて、
希望に満ちてたんだ。

その“もしかしたら”が、たとえ夢であったとしても。

その時は、ちゃんと希望を持てたんだ――…