―椎名side―…
「ねぇ、あの人誰?」
病院からの帰り道。
自転車をトボトボ押しながら、俺たちは家路を歩いていた。
「鈴原と同室の奴」
「そっか」
なんだか、来る時より、気分は下がってる。
そりゃ、あれだけ木下に言われたら…な。
「また改めて行くんだよね?」
優木は俺の顔を覗き込むように聞いてきた。
「ああ…」
「……」
「……」
元気は出せないまま、俺たちは別々の道へと帰った。
一人寂しく、家路を歩く。
今は空なんて見てられなかった。
地面ばかり向いて、歩いていた。
俺って今、「しつこい男」なのかな。
…きっと、そーだろうなー…

