――おそらく少女はワサビの求める答えを持たない。
それでも、確実にそうだと確信するためにワサビはやや厳しい口調で問い直した。
少女はその語調の敵意に反応して少し刀を持ち直す。
「――知らない。聞いたこともないよ。キリュウ…なんだっけ?ソウジロウさん?」
再び殺気を放ち始めた少女をにらんでいたワサビだったが、ややあってふと視線を和らげた。
「――そうか。悪かったな、変なこと聞いて。」
ワサビはもう用は済んだとばかりに警戒を解き、武器さえ懐にしまってしまったが、少女の敵意はゆるがない。
「…ホントにそんなことが聞きたかったの?ホントだとしたらなんで?
なんでわざわざあたしを追っかけて来てそんなこと聞くわけ?」
当然の疑問だった。
初めて自分を追う人間に出会って多少動揺しているのに、その上わけの分からない質問をぶつけられたらさらに警戒を深めて当たり前だ。
理由など話すつもりはなかったが、ようやく会えた賊の至極真っ当な問い返しにワサビは思わず笑ってしまった。
「いや、他意はねえのさ。
――このご時世に刀狩り、しかも賊は女みたいな奴…本当に女とは驚いたけどな。
まあ俺の知り合いでそういうことをしそうな女みたいな野郎がいたもんでね。」
「それが"ソウジロウ"さん?」
「ああ。」



