この10日間、調査と張り込みを続けてきた。
夜に1人歩きをしている官僚を尾行したり、事件があった場所で目撃者を探したり、侠客や盗賊のたまり場になっている旅籠や遊郭をのぞいてみたり。
知っている限りの"耳"仲間に聞き込みもした。
結果分かったのは、襲われているのは官吏ばかりでなく、ヤクザ者や盗賊なども被害にあっていること。――それはつまり刀を持つ者なら誰でもいいということだ。
そして、誰一人として"おなご弁慶"の居場所も正体も知らないということの2つだった。
「あんまりハデに動くと"おなご弁慶"より先にアンタが痛い目にあうよ。」
"耳"仲間のひとりはワサビにそう忠告した。
その存在を公表したことで政府はどうあっても逮捕しないと示しがつかないし、侠客連中は連中でやられっぱなしでは腹の虫が収まらないときている。
そんな中で被害者どちらにも属していないワサビが単独で調査をしているのはどうにも目立つ。
そもそも、"耳"は普段の行動範囲を超えてまで調査などしない。あくまで己の生活圏内で拾った情報を売るだけなのだ。
…下手をすればワサビの方に妙な嫌疑がかかる恐れがある。
それでもある理由のために、ワサビは調査を続けた。
――そして行き着いた結末が今夜。



