× × × ×
(なんなんだ、このガキは)
ワサビは目の前の賊に妙な違和感を感じていた。
――少女に襲いかかった虎はワサビだった。
"おなご弁慶"の話を最初に聞いてから、すでに10日が経っている。
――10日前はまるで知られていなかった"おなご弁慶"は、翌日にはわざわざ調べるまでもなく人々の口にのぼる存在になっていた。
ワサビが柳の陰で密談していたまさにその夜、"おなご弁慶"はこれまでにない大きな獲物を仕留めたのだった。
『陸軍庁官僚襲撃さる』
翌朝、読売※はその見出し一色だった。
襲われたのは陸軍に勤める事務官。
身分的にははっきり言ってこれまでの標的となんら変わらないが、その事務官は政府の中枢"元老院"の一員を父親に持っていた。
――これまで体面を気にして賊の存在を伏せていた警視局も、圧力を受けて捜査を公開せざるをえなかったらしい。
(なんなんだ、このガキは)
ワサビは目の前の賊に妙な違和感を感じていた。
――少女に襲いかかった虎はワサビだった。
"おなご弁慶"の話を最初に聞いてから、すでに10日が経っている。
――10日前はまるで知られていなかった"おなご弁慶"は、翌日にはわざわざ調べるまでもなく人々の口にのぼる存在になっていた。
ワサビが柳の陰で密談していたまさにその夜、"おなご弁慶"はこれまでにない大きな獲物を仕留めたのだった。
『陸軍庁官僚襲撃さる』
翌朝、読売※はその見出し一色だった。
襲われたのは陸軍に勤める事務官。
身分的にははっきり言ってこれまでの標的となんら変わらないが、その事務官は政府の中枢"元老院"の一員を父親に持っていた。
――これまで体面を気にして賊の存在を伏せていた警視局も、圧力を受けて捜査を公開せざるをえなかったらしい。



