「知ってることを話すから、物騒なものをどけてくれないか。
お前を捕まえないと約束するから。」
だめ押しのように言ってやると、賊の刃がまた少し緩む。
――その、一瞬の隙を見逃さなかった。
「…死ねぇッ!!」
一言叫ぶと、久坂は大きく身を沈めて軍刀に手を掛けた。
抜きざま振り返ると、賊の思った以上に頼りない姿が黒々と闇に立っているのが一瞬目に入る。
(…ふん、他愛もない)
夜目にも鈍く光る刃が影を凪ぎ払った…
…――かに見えた。
その次の瞬間。
「…あんた、遅すぎ。」
呆れたような声が、左手から聞こえた。
大きく右に空振った姿勢のまま、声もなく目を見開いた久坂は、がら空きの左脇からこちらへ素早く踏み込んで来る子どもの顔をわずかに見た。
――見た、と思った次の瞬間には、彼の身体は力を失って橋げたの上に転がっていた。



